おすすめライトノベル

天鏡のアルデラミン

宇野朴人
分類:ファンタジー戦記

このシリーズはライトノベルでは珍しい、本格的な軍事戦略が楽しめる作品で、知略を駆使した頭脳バトルが好きな方におすすめしたい作品だ。世界観、ストーリーともによく練りこまれているため、彼らがどうなっていくのか期待が高まる。読み始めたのは最近なんだが、全14巻で完結のうち、正月休みに12巻まで大人買いして読破してしまった。ほんとに面白い。続きが気になる。

天鏡のアルデラミンが凄いのは、一貫してテーマがあることだと思う。イクタやヤトリのキャラクターが魅力的で、周りを囲むマシュー、トルウェイ、ハロ、騎士団のメンツやお姫さんもしっかりキャラ立ちしていて個々に魅力的、っていうのはあるにせよ、それだけじゃあない。最初から最後までまったくブレない、個人の心の救済、というテーマがある。ヤトリとシャミーユは、己が何者なのかということを自らの自由意志で決めていない。この二人をそこから救済するというのが、物語を構成する一番太い幹だと思う。ジャンはイケメンなので置いといて。ていうか自分で意志持ちそうだし。やっぱ天才は違うね、腹の立つことに。

こっからはネタバレ超要注意!

ヤトリの救われ方は、なんというか、ここで?!ってのは思ったけどでも、生きてる限りイグセムの業に囚われ続けるヤトリシノの心の在り方に対する一つの「救い」の形なんじゃないかと思う。囚われるっていうのは違うかもしれないなぁ、ヤトリシノ・イグセムはイグセムであるからこそヤトリシノ・イグセムだ。ヤトリシノとイグセムは同じもの。イグセムはヤトリシノの中身。ちょっと何言ってるかわかんなくなりそうだけど、それでも、ヤトリが最期に望んだのはイクタの幸せとシャミーユの幸せだった。それはヤトリシノの心から出た声で、イグセムの声じゃない。ひとりの人の、人間性の尊さ、なのかな、作者のメッセージを感じるシーンだった。めちゃくちゃ泣いた〜〜〜。近しい人にとっては死は喪失でしかなくて、自分の一部が喪失してしまったら、もうその意味とか、考えてられないと思う。私の話を書くと、事故で家族が亡くなったことがあるけど、時間って偉大で、だんだんその状態に慣れてくる。自分は自分で、生きていくしかないんだな。

もう一つ、「すべからく英雄は過労で死ぬ」というイクタの持論には、正当じゃない怠け方をする人間に対する明確な敵意がこもっている。英雄であろうと努力する者に対する使い潰されることへの警鐘と、英雄に依存し努力しない人間への喚起。ともすれば社会主義ともとられそうな思想ではあるが、人が正しく努力することこそが、誰もが正当な権利をもって道を選択する方法なのではないだろうか。
ヤトリは救われた、あとはシャミーユが救われれば、この物語は終わるはず。なんであれ、シャミーユの救い、というところでまとまるんじゃないだろうか。まだ読み切ってないんだけども。この春は宇野さんの作品を読み漁ることになりそう。アルデラミンを読み終わったら、次はラノベランキング1位の「7つの魔剣が支配する」だな。

話がそれたけれど、アニメの話も少し。アニメは、原作でちょっと演出が露骨な部分(ストーリー展開に正当性を持たせるためかとは思うが)を、丁寧に最初から伏線を張って自然に描いてあるので、よりまとまった話になっている。脚本の構成が素晴らしい。何よりイクタのストーリーとして描きなおされてるんでさらによい。イクタ推しのワタシとしては最高だ。
TVアニメ『ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン』公式サイト
http://alderamin.net/

なんにせよ、この作品は非常にクオリティが高い。知略・戦略のレベルが高くて一場面ごとの納得感が大きいのだ。ハイクオリティな活躍シーンが多いから、イクタくんの好感度が上がるのは当然といえば当然だな。それにしてもイクタくんのモテかたは異常。誰も表立っては言わないが、出てくる女子キャラは9割方イクタくんのことが好き。ハーレムかよって思うけど、イクタくんはカッコ良いから仕方ないのだ。

戦記物のラノベを読んでいて思うのは、群雄割拠で英雄を輩出しがちなあたり、中世ヨーロッパや日本の戦国時代と設定が似てるなということだ。最近は日本の戦国時代が舞台のラノベもたくさん出ていて、結構おもしろい話も多い。「なろうサイト(「小説家になろう」という、みんなのための小説投稿型サイト)」から出版されたweb小説なのだけど、「竹中半兵衛の生存戦略」は超おもしろいのでぜひ読んでみてほしい。
https://ncode.syosetu.com/n0681de/

戦国時代は平安や江戸時代みたいに生活基盤のルールが整っていなくて、みんなが必死に生きている。特に身分の上下が固定されていないから、ひょっとしたら本当に誰でものしあがれるかもしれないあたり、すごく夢があると思う。実際、秀吉だって出自は農民と変わらない生活をしていた足軽なのだ。大河ドラマの「秀吉」は好きだったなぁ。大河ドラマも意外と泥臭い人間ドラマを描いていて結構おもしろい。次のサイトは大河ドラマを楽しむコツがまとめてあって、俳優好きの人なんかも楽しめると思うので良ければぜひ。
どんとこい大河ドラマ
http://taigadoramanosusume.com