全部で18巻。私たちゆとり世代が小中学生の頃あたりからライトノベルが流行り出したと記憶している。私はこの作品で初めて、ライトノベルってすげーおもしろいんだと思った。ちょうど3巻が刊行された頃くらいに読み始めて、全18巻で完結するまで追いかけ続けた。青春のバイブルだ。
1巻はミステリー要素もあるが、エンタメ要素が強く、ライトノベルだな〜という感じ。だが、巻を追うごとに話が深くなっていって、4巻「茶州編」あたりから冒険モノの感じが強くなる。雪乃紗衣はこれがデビュー作なので、1巻は1作目でもある。続刊が出るかもわからないので多少軽くなるのは仕方ないだろう。1冊完結ものとしては綺麗にまとまっていた。むしろ初シリーズでこれだけの長編を書き上げて、人気も高いってすごいなと思う。読者層も幅広く、女性が多いようだがその年齢は60代までカバーしているらしい。著者の後書きで、「読者の中で多分一番高齢なんじゃないかと思います」と60代の方からファンレターがあった、という話があった。
彩雲国物語は架空の国「彩雲国」が舞台。大枠は中国唐代の制度を参考にしていて、女性は官吏になれない世界。だが、主人公「紅 秀麗」は特例として国試の受験を認められる。幼い頃に飢饉を経験した秀麗は、官吏になり良い市政を敷くのが夢だった。表立ってではないが高官であった父の指導もあって見事及第し、女官吏として数々の困難な状況を解決していく。王様との恋やお家の事情など、若者の悩みも多く、魅力的なキャラクターたちによっておもしろおかしく綴られていくのだが、物語の後半、朝廷の権力闘争を描く筆致は見事だ。4巻あたり以降、伏線の回収が素晴らしく、大人が読んでも非常におもしろい。高齢の読者が多い理由はここにあるんだろう。